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(今は頼むからこっちを見てくれるな……)
情けない話だが、直人を盾にして画面から隠れるように座ってから、初めて俺はやっと一息つけた。
でも、さすがに今の俺はあまり直人に見られたい状態じゃない。絶対表情とか強張ってるし。
(早く終われ)
映画自体、始まって一時間くらいしか経っていないが、俺は開始後三十分も経たないうちからずっとそればかり願っている。
直人は真剣に観てるし、なんか邪魔するのも気が引けて、でもやはり直人に密着していたら反応するなという方が無理な話で。
無意識に直人の首筋に唇を寄せて鎖骨に沿って軽く舌を這わせたら、そこからはもう必然のように手が自然と胸の突起をこすっていた。
「アンタは映画も大人しく観られねぇのかよ……」
直人が呆れたように吐息を漏らしたのを合図にしたように、俺はこちらを振り返った直人の唇を塞ぐ。
舌を絡めて直人の情欲を煽るように彼の下腹部へと手を伸ばす。
――と、そこでテレビが大音量を立てて画面一杯に例のアイツ――ジェイソン――を映し出したもんだから、俺は思わずビクッと身体を震わせてしまった。
途端、俺の腕の中の直人が堪え切れないように唇を離すと、身体を震わせてクスクスと笑い始める。
もう、さすがにキスどころじゃないよな。うん、さすがにそれは俺もわかる。
分かるけど――。
バツの悪さにムスッとしてそっぽを向いたら、
「逸樹さん……こういうの苦手なら苦手って言ってくれればいいのに」
俺の頬を優しく撫でながら直人が笑う。
俺はそれに何も答えることが出来なくて。
直人がリモコンに手を伸ばしてテレビの電源を切ると、そんな俺の頬に掠めるような口づけをくれる。
「ね、続き、しないの? それとも今日はもうやめとく?」
まるで子供をあやすように直人に頭をポンポン、と撫でられたのが悔しくて、俺は直人を床に縫いとめた。
「直人、お前、俺を煽ったこと、後悔するなよ?」
テレビが切れたことで、俺は俄然強気になった。
夜はまだ長い。さっきのかっこ悪かったトコ、払拭するぐらいかっこつけさせてくれよ。いいだろ?
END(2019/12/11ー2019/12/12)
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