1835人が本棚に入れています
本棚に追加
「っ……もう、無理っ……」
咳き込んだ拍子に、口端からこぼれ出た液体が首筋を伝う。
もう何度そうされたか分からないその残りを嚥下して、俺は水膜に滲む眼差しを逸樹さんに向けた。
「まだ一缶空いてねぇ」
「っ全部、飲ませる気かよ……!」
「大した量じゃねぇだろ」
そう言って目を細めた逸樹さんの手には、俺がまだ手を付けていなかった缶ビールが握られていた。
それを逸樹さんは、一回一回口移しで俺に飲ませてくるのだ。
それも、信じられないことに、
「あっ……や、いまっ……動く、なぁ……!」
身体をしっかりと繋げた状態で――。
逃げたいように身を捩らせてみても、逸樹さんの片手は俺の太腿を押さえ込んで離してはくれない。
俺の髪も顔も、捲り上げられただけのパーカーも、もっと言えばリビングの床――周辺のラグまでそのせいでびしょ濡れになっていたけれど、そんなことには一切お構いなしで、
「っや、……もう、いらなっ……」
「遠慮すんなよ」
言うなり、逸樹さんは俺の前でまた一口ビールを呷る。
最初のコメントを投稿しよう!