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深夜のコンビニとは言っても、場所柄か客足が途絶えることは滅多にない。
ガキの頃によく買い食いに立ち寄っていた、地元のコンビニは23時には閉店していたから、きっとそれだけ暇なんだろうと思っていたのに、
(……眠…)
込み上げた欠伸を最後まで漏らすことも出来ないまま、閉まったばかりの自動ドアが開くくらいには、今夜だってそれなりに忙しい。
まぁ、ここは繁華街も近いし、目の前は目の前で夜が更けても車の行き来が止まない、いわゆる幹線道路なんだから、当然と言えば当然だ。
周辺から通える場所に大学もあるから、下宿してる学生――俺も含めて――だって少なくないし…。
「…いらっしゃいませ」
開いたドアを潜る客にちらりと目を遣って、お決まりの定型句を口にする。
入ってきたのは、長身のすらりとした男だった。
再び込み上げた欠伸をレジカウンターの中で噛み殺しながら、何となく店内を一望すると、
(あれ、今他に客いねーのか)
今更そんな現状に気付いて、思わず肩から力が抜ける。
元々夜には強いはずなのに、今夜は何だか妙に眠い。
視線を落とすと、胸元で揺れる『三木直人』と書かれたネームプレートすら、さながら催眠術の振り子のように思えてくる。
いや、原因は解かっている。昨夜、期限間近のレポートに追われていた所為だ。
忘れていたけど、そう言えばここ二日間の睡眠時間はほとんどゼロに近い。
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