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(レジ交代してもらった方がいいかな…)
深夜のバイトは大体二人で、現在、もう一人はウォークイン――いわゆるドリンク用大型冷蔵庫の中にいる。
どっちが楽かと言えばレジだったけれど、これだけ眠い時に単調な仕事はちょっとやばい。
釣りの間違いでもして、苦情が来るのも困るし、それで店長に怒られるのも嫌だし…。
とは思うものの、仕事を分担する際ジャンケンをして、勝ったのは俺だ。要するに、レジを選んだのは俺自身。
なのにそれを今更替わって欲しいと言うのも何だか随分勝手なような…。
(……つか、何やってんだよ。早く買って帰れよ…)
俺は再三に渡って込み上げる欠伸を、今度は思い切り漏らしながら、未だレジに現れない客の姿を店内に探した。
彼は酒のストッカーの前で立ち止まり、まるで何でもいいみたいに適当にそこら辺の酒を手に取っていた。ウィスキーやらワインやら、それこそ缶ビールやら手当たり次第に…。
(いや、それ寝酒にするには多いだろ)
そうして、数本のボトルや缶を手に、ようやくレジの前まで来た彼は、それを案外静かに下ろして、
「あとこれも」
どこに持っていたのか、少しばかりカラフルな箱もその脇にトンと並べて置いた。
煙草か、それより少し大きいくらいのその箱は、店で商品として扱っているからでなく、さすがに俺だって知っているものだ。
避妊具。スキン。早い話がコンドーム。
別に誰が買って行ったって構わないけど…俺は別に関係ないし。
寧ろ、女連れでもなさそうなのに、前もって買うだけマシじゃんと思わないでもないけれど。
なんだろ、この、目の前の男の過剰な色気っつーか。
そのホスト宜しく整った外見の所為なのか知らないけど――。
とにかく、彼が持ってきたと言うだけで、妙にいかがわしい光景が頭に浮かびそうになる。
(…いや、何考えてんだ。そんな欲求不満か、俺は)
なんでもない風にレジを通し、どうにか思考を切り替えると、だが今度は別のことが頭を過ぎり、俺は再び手を止めた。
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