重ならない時間

2/2
前へ
/31ページ
次へ
「全く、『フォンテンヌブロー』の『ボナパルト』の様な気分だ・・・。」 僕は馬の手綱を取りながら、横座りで後ろに座っている君に言った。 「そう?どちらかと言えば『シュタイナー』か、『ヴェンク』の・・・あるいは『ヨラッセ』かも・・・。」 君の言葉に僕は答える。 「誰の事をいっているんだい?」 「知らないの?『ヒトラー』が待ち望んだ『ベルリン』の解放者よ?」 「『ヒトラー』・・・?」 「・・・貴方の世界からは20年後の世界だった・・・ごめんなさい。」 僕の言葉に君は、ぱさりと漆黒の翼を下げて少し悲しそうに言った。 僕は何も言わずに君の頭を撫でて、馬の手綱を取った・・・。 僕達の周囲には行進する兵士の列・・・列・・・列・・・そして、地面を震わす数万の軍靴の響き・・・夏の風が辺境伯の軍旗と、帝国旗を靡かせていく・・・。 僕達は首都『オルキデ』へ確実に近づいていた。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加