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稲光の響きが当たり一面に木霊すると同時に、天井を覆う黒い雲から堰を切ったように大粒の雨が地上に降り注いだ・・・。
「相変わらず見事だ・・・これで敵の銃や大砲を封じることが出来る。」
「恐れ入りますオニオン辺境伯様・・・。
彼女が使った魔力の前には敵の魔術師も為す術無しと推察いたします。」
僕は、馬上にて僕を見下ろす辺境伯に向かって恭しく頭を下げると、さっきから僕の服を掴んでいる君の頭を撫でた。
「おお、そうであった。想いのままに天候を操る貴女の力・・・此度も私をお助け下さり感謝の仕様がありませぬ。」
僕が、君の頭を撫でているのを見た・・・もう60歳近くなる辺境伯は、皺だらけの顔に笑みを浮かべると、トレードマークの白く、長い顎鬚を無意識の内に触りながら、君に話しかけた。
「・・・。」
君は何も言わずに僕の顔を見た。
僕は頷くと君の顔を優しく撫でて言った。
「疲れていない?大丈夫?」
「うん、大丈夫・・・。」
君は小さく笑った・・・。
天候を操る魔法は大きな力を消費する・・・しかも、今回は敵にも魔法使いがいて、力比べの結果、君が競り勝ち・・・雨を降らせたのを僕はよく分かっている・・・。
後で、何か美味しいものでも食べさせてあげよう・・・。
僕はそう思うと、オニオン辺境伯に言った。
「伯爵様、では参りましょう・・・先陣はいつもの如く僕が・・・敵の横隊を蹴散らします。その後・・・押し出して下さい。」
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