僕と君

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敵を撃破したオニオン辺境伯の軍は、『ピサンリ』という町に入城し陣を張った・・・。 その晩は『ピサンリ』市議会の献上品で盛大な宴が催された・・・オニオン辺境伯は、『ピサンリ』に対し降伏と献上品を求めた。 もしもそれが叶わなければ、町を力ずくで陥とし、町を兵士の思いのままにさせる・・・と恫喝した。 『ピサンリ』市議会は、辺境伯の申し出を受けた・・・。 その代わり、辺境伯も軍に対して兵による略奪を禁じ、規律を遵守するよう命じていた。 「此度の勝利も貴君ら二人のおかげだ・・・。」 宴席で辺境伯は僕と君に手ずから『ジャガイモ酒』を注ぎ、感謝の意を示した。 月明かりが仄かに映える庭を、僕と君は歩いていた。 「ここに来てから、かなり経ったね。」 僕は、池の畔で立ち止まると君に言った。 「うん。」 君の言葉は相変わらず短い・・・。 「早く、僕達が本来あるべき場所に戻らなくちゃ・・・。」 「そう?」 君はそう言うと、僕の足元にしゃがんで傍らにある石を池に投げた・・・。 「君は、この世界が好きなの?」 「元の世界がここよりいいのか分からない・・・それに・・・。」 君は紡ぎかけた言葉を一瞬区切り、膝を抱えながらじっと前を見て続けた。 「少なくとも、この世界には・・・貴方がいるから。」 僕は、君の横に座ってそっと肩を抱いた。
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