０８３１～僕の後悔と、君の嘘～

この世界

オニオン辺境伯の軍は、数日間を兵士の休息と物資の補給に当てた。

新たに『ピサンリ』周辺で兵を募り、伯の軍勢は２万を数えた。

首都『オルキデ』より最も遠い辺境を任されていた伯の領地は、『フルーツ』の叛乱とそれに伴う混乱からはさしたる影響を受けることが無く、皇帝から下賜された国境警備の第５軍団を中核にオニオン軍集団を編成し、首都への進軍を続けていた。

僕は詳しくは知らないのだけれど、事の発端は、２年前野菜帝国の長年に亘る支配と差別に対し、炭鉱労働者であったフルーツの一人、『バステーク』の呼びかけに応え叛乱が発生したという・・・。

最初は小さな叛乱だったが、やがて各地で彼の呼びかけに呼応するフルーツ達が現れ叛乱の火は国内に広がっていった。

それに乗じて宿敵の『フィッシュ王国』、『ミート連邦』がフルーツを支援し国内は戦火に包まれていた。

帝国軍は最初こそは叛乱を駆逐していったが、ついに『フィッシュ王国』、『ミート連邦』、そして『パスタ共和国』までが圧倒的な軍を帝国に派遣するに到り帝国側は窮地に陥っていた。

いまや帝国のかつての威厳は地に落ちつつあった。

首都『オルキデ』は叛乱軍達に包囲され、首都陥落も時間の問題であった。

包囲下の首都で皇帝と皇太子は、皇弟シトルイユ公率いる４万の近衛軍と、戦上手と謳われたオニオン辺境伯が到着し、首都を開放してくれるのを待っているという・・・。

しかし、僕は無理だと思っている。

包囲軍は総勢１５万、こちらはその半分以下・・・しかも、『フィッシュ王国』軍には『タイム・キャット』という名うての魔法使いがいると聞く・・・。

彼は、海神『セクシー・タスウ』と黄泉の国の女王『サ・キューン』という複数の神と契約した稀有な魔法使いで、数多の魔法を使うと聞いている・・・。

彼の力がどれ程なのか・・・何度か使い魔を飛ばしては見たものの、使い魔が戻ってくることは無かった。