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「・・・期待している。だが、頼むから本当に無茶はしないでくれよ?昴」
「頼んだ本人がそれを云う?」
「違う!」
「ん?」
「頼んだのは『クロウ』であって、『静(オレ)』じゃない・・・」
「屁理屈云って・・・」
目を伏せて云う静に、昴は溜息を吐きながら苦笑して答えた。
「そう考えろって云ったのは、お前だろ?」
「そうだったっけ?」
「・・・そうだよ」
そう互いに云いつつも徐々に近づく二人の物理的距離。
二人の間を隔てるカウンターを邪魔に思いながらも、静はそのまま彼女に口づけた。
「昴・・・好きだ・・・」
「知ってる・・・私も、静が好きだよ・・・」
「知ってる」
互いに仕事モードに切り替える前にたっぷりとイチャつき、名残惜しそうに離れる静にクスリと笑みを漏らす昴。
最後にもう一度微笑んで彼を見つめたのち、彼女は踵を返して彼の店を後にした。
*****
「まずは過去のデータからっと・・・よし」
翌日、昴は早速仕事用のパソコンをデスクに置く。
情報屋としての事務所は別にあるが、今回は『クロウ』からの依頼。
『KING』の依頼をこなすときは特に情報漏れや余計な邪魔が入らないように自宅で仕事をするのが彼女の拘りだった。
KINGが扱うのは「盗難品」。
その情報を得るためには結構な労力が居るのだ。
今回のように得体の知れない相手の場合は特に・・・。
「うー・・・期待外れ。大した情報ないなぁ?これ、全部『クロウ』が教えてくれた情報だよ・・・」
警視庁のデータベースにアクセス(依頼を引き受けるうえでの静が出した条件のうちの一つ)し、今回のターゲットを盗んだという組織の関わった過去のデータを漁りながら昴は一人つぶやく。
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