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「すみません!この子重症みたいなので最優先で診てやって下さい」
中に誰かいたらどうするのとハラハラする私を余所に美鈴は怯まず中に向かって叫んだ。
美鈴の背中からそっと中を覗き見るとベッドのあるカーテンの向こう側から「こら、ここは保健室だぞ静かに入ってこい」と顔を出す仁ちゃんの姿。
そんな仁ちゃんの声をまるで無視したように美鈴は「この子、よろしくお願いしますね」と、背中に隠れる私をズイっと自分の前に引き出した。
今だ涙の後が頬に残る私の顔を見た仁ちゃんは目を見開いて驚いたのもつかの間。
すぐに「こっちにおいで」と微笑みかける。
それを見た美鈴は小さな声で「しっかりね」と私の背を押した。
背を押された勢いで一歩足が出て、保健室の中に入った。
背後でガラガラっとドアがしまる音がして、まもなく美鈴の足音が遠退いていった。
その場から一歩も進めない私に苦笑した仁ちゃんが、こちらへゆっくりとやってくる。
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