迫り来る波

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「………どうして?」 「あー、愛が全速力で走ってるトコ見かけてさ。何かあったのかと思って追っかけてきた」 ポリポリ頭を掻きながら気まずそうな顔の亮太。 きっと私と同じようにさっきのシーンを見たんだと思う。 「なぁ、愛が今どんな事考えてるか、分かんねぇけど、その気持ち西村にちゃんと伝えてるか? お前最近、辛そうな顔してるよ?」 ポンポンと私の頭を撫でる亮太の手が優しくて、ポロッと本音が出そうになる。 でも、亮太を頼っちゃいけない。 だって、仁ちゃんを選んだのは私。 ちゃんと覚悟して決めたことだったはず。 なのに、どうしてこんなに動揺してるんだろう。 『辛いよ』って言葉を吐いてしまいそうになる。 「愛……そんなに辛いならやめれば?」 ブンブンと頭を振って見せることしかできなかった。 何か声を出した瞬間、涙も一緒に出てしまいそうだったから。
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