第1話 佐藤萌

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「ママぁ~そんな大きなカバンを持ってどこに行くの?」 「萌…………ごめんね」 「何で謝るの?」 「ごめんね?」 「どういうこと?」 「ママねぇ、パパと離婚をしたの」 「え?」 「だからこの家を出て行かなきゃならなくなったの」 「えっ、イヤだよ」 「ごめんね萌」 「イヤだ。萌も一緒にイク」 「ごめんね萌。それは無理なの」 「何で? イヤだよ。萌も一緒に連れて行って」 「ごめんね萌。裁判でそう決まったの。だからママも萌と一緒に行きたいけど、ムリなの。ごめんね」 「裁判ってなに? そんなの知らないよ。ねぇママ、萌を置いて行かないで」 「萌、萌、大好きよ。ママは萌のことが一番好き。このまま…………」 「このまま?」 「一緒に死んじゃおうか?」 「え? それはイヤだよ。死んじゃダメ」 「そうだよね。死んじゃダメだよね」 「ママ…………」 「ごめん萌。ママもう行くね。元気でね」 「ママ、ママぁああ~~~」 萌は目を覚ました。 涙が溢れている。 父と離婚した母と、最期に交わした会話のシーンの夢だった。
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