第1章

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スーツはびしょ濡れで、泥を跳ねたような跡も見てとれる。相当急いでいたようだ。 「助かったよありがとう。……ええと、私は河井だ。貴方は?」 「山野だ」 河井にタオルと着替えを渡したが、河井はタオルだけ受けとると、その緑色の身体を拭き始めた。 「全く困った話だよ。法律が出来たから安心して世に出てきたらこれだ。人は金に汚いのだな」 「まあ、今でも慣れない人はいるんだろう。神話の世界の生き物達が世の中に現れたのは、かれこれ二十年程だからな」 「だからと言っていきなり命を狙ってくることはないだろう!なんだ、河童なら簡単に殺れるとでも思っているのか!雪女なんか命を狙われるどころか、理想の結婚相手ランキング一位だ。この差はなんだ!」 河井はそう喚き散らしたあと、電源が切れたかのように静かになった。 「取り敢えず、朝までここで過ごしていいか?」 「好きにしろ」
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