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閉じ込められた和子に気づく人は誰もいませんでした。開かない扉、真っ黒になっていく体育館の倉庫、追い詰められた和子はなんとしても、そこから出ようと壁を引っかき、頭を扉に叩きつけました。爪は割れて、額から血が溢れていきますが、和子に気づく人は誰もいませんでした。和子は恐怖のあまり、ショックで死んでしまいましたとさ、おしまい』
女の子の話が終わり、ふぅと一息つくと、ごそごそとテーブルの上に何か書いているようだった。ビデオカメラが動き、テーブルには大きな用紙に鳥居のマークが描かれており、五人の名前が書かれていた。
宮司由真(ミヤジ、ユマ)
梓川美保(アズサガワ、ミホ)
後藤百合(ゴトウ、ユリ)
堤月子(ツツミ、ツキコ)
そして最後、山田真優(ヤマダ、マユ)おそらく怪談を語っていたのは山田真優なのだろう。彼女の声が響き、山田真優の名前に真っ赤な赤線が引かれた。
「えっと、あとは教室の左側の扉から出て、右側の扉から入ってくるんだよね?」
山田真優が言った。
「そうそう、ただし、絶対に振り向いちゃダメだよ。よくないことが起こるから」
「これで願い事が叶うってんだから、鳥居様ってのも案外、簡単なんじゃね?」
五人のうちの一人が注意を促すが、別の誰かに邪魔をされ、笑い話になってしまう。声だけなので、誰が誰なのか判別できない。
わかっているのは、山田真優一人だけ、ガタガタと音がして、山田真優がビデオカメラを持った。視線より下のほうを写しているのか、視界がグラグラと揺れる。
「スクープ。よろしくね。鳥居様の正体ってやつをさ」
「うん、わかってる」
山田真優は扉を開き、廊下に出て扉を閉めた。あとは廊下を通り過ぎ、反対側の扉から教室に戻るだけのはずだった。
扉を閉じた瞬間、視界が真っ黒になり、そこは体育館の倉庫に様変わりしていた。当然のことだが、教室に続く扉はない。
「どういうこと? きゃっ!?」
あたりをビデオカメラで写していた。山田真優は思わず悲鳴を上げた。足元にねっとりとした何かがあったのだ。暗くてよく見えないが、血生臭い匂いがする。
「開けて、開けてよぉ!!」
声と共に血まみれの女の子が山田真優の首を掴んだ。ギリギリと首を締め付けながら女の子は叫ぶ。
「開けて、開けて、開けてぇ!! なんでこんなヒドいことするの!? 私、悪くないのに」
ガンッ!! ガンッ!! ガンッ!!
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