第1章

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死んだかどうかわからない。もしかしたら上手く逃げられたかもしれない。梓川美保は一途の希望を掴む。山田真優は生き残っているかもしれない。 「今度は私がやるわ」 たとえ、残りの二人を残しても、梓川美保は生き残ると決めた。 『これはトンネルにまつわる物語よ。トンネルって怪談や怪異の舞台にされるわよね。その人達も古くなって使われなくなったトンネルに向かったの。最初はおもしろ半分だったけど、トンネルに時点でおかしいと思ってたのよ。けど、引き返せなかった。ハンドルはガッチリと固まったまま動かない、アクセルは入りっぱなし、ブレーキは効かない。 カーラジオは雑音を撒き散らして、助手席に座っていた彼女が悲鳴をあげたわ。 ドンドン、トンネルの入り口が遠くなっていくさして長くないトンネルが生物の胃袋になったような錯覚がしたそうよ。運転手もいい加減、パニックに陥りそうになったとき、助手席に座っていた彼女が言ったわ。 「ねぇ、トンネルの天井が低くなってない?」 運転手の男がえ? 横を向いた時には車の天井がミシャリと潰れ、こじ開けられた隙間から真っ黒い亡者が車内に潜り込み、運転手も彼女も食い殺されて、あとに残されたのは、空っぽになった車だけだった』 梓川美保は口早に語り終えて、自分の名前を赤線で消した。一分一秒でも早く、ここから出たかった。教室の扉を開き、外を出た。 見慣れた学校の廊下だった。梓川美保はハッと笑った。そうだ、こんなのは気のせいなんだ。わざわざ教室に戻る必要はない。梓川美保は廊下を走り出し、出口に向かい、すぐに異変に気づく。 (出口って、どこだっけ?) どこまでも続く、廊下に立ち止まりあたりを見渡しても、出口がどこかわからない。まるで出口のないトンネルに入り込んだような、ダメだ。立ち止まっては、そう思った時には首を掴まれていた。天井から垂れる黒い影が、梓川美保を見下ろし、大きく口を開き。バクリと頭部を食いちぎった。ガシャンと無意識のうちに持っていた、ビデオカメラが廊下に落ちて梓川美保の食われる音だけが響いていた。 ゴトンッとひとりでにビデオカメラが机の置かれた。宮司由真はそのビデオカメラを気味の悪い物のように思えた。山田真優も、後藤百合も、梓川美保も、誰もがビデオカメラを持って出て行った。まるで何かを記録するように、目の前に座る少女が今度はどっちが語ると尋ねてきた。なんとなく、
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