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佐竹宗八は完全に意識を失っていた。クニが階段を駆けあがり、タツオの元にやってくると、背中を力強く叩いた。衝撃が左手の指先に伝わり、骨折の痛みが倍加する。
「やったな、タツオ。まさか佐竹さんに完全勝利するなんて、想像もしてなかった。おまえって、ほんとにすごいやつだな」
タツオは顔をしかめながら、笑うことしかできなかった。ジョージがいう。
「左手を捨てようと決めたのは、いつだい?」
「最後だよ。小手先は結局、小手先だ。不意をつくから、初見の戦場ではうまくいくだろうけど、一度見せられたら対応できる」
タツオは早くも倍ほどに腫(は)れ始めた左手の小指を上げて見せる。
「ぼくはギターとか弾かないし、左手の小指くらい折れてもそんなに困らない」
クニがうなるようにいった。
「おーっ、カッコいいな、タツオ」
タツオは担架に乗せられていく佐竹宗八を見送った。まだ意識は戻らないようだ。
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