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折れた小指にちいさな心臓ができたようだった。どくどくと脈打つたびに、激しい痛みのありかを伝えてくる。左手小指のつけ根、基節骨が折れているらしい。小指は親指ほどにふくれていた。医務室の軍医は小指に金属製の添え木をあてると、包帯を巻いていく。
中年の医師はこともなげにいった。
「レントゲンはあとで撮ってやる。これから決勝戦なんだろう。せいぜいがんばってこい」
さすがに進駐官養成高校の軍医だった。これくらいの怪我(けが)なら、十分戦闘可能という判断なのだろう。軍医はタツオの肩をぽんっと叩(たた)いた。声を潜(ひそ)める。
「それからな、わたしも五王(ごおう)と東園寺(とうえんじ)派の横暴には嫌気がさしていた。進駐軍は奴らの専有物じゃない。東園寺のぼんぼんに目にもの見せてくれ」
タツオは力のない声で返事をする。さすがに厳しい試合を勝ち抜いて、体力は限界だった。
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