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男はそう言うと、僅かな気配も消してしまった。
静寂。
いなくなったのだろうか。
分からない。
すると突然、ひやりとした冷気が、隣から流れた。
風?いや、違う。
これは…きっと
「ーーこんな夜更けに夜這いとは、感心できませんね」
殺気だ…
「安心しなよ。
田舎娘に夜這いするほど、困ってないんでね。」
くっくっと喉の奥で笑う声が、闇の中響く。
男は、消えてしまっていた訳じやなかったらしい。
「にしても…こいつを守るとかなんとか、俺の前で豪語したわりにゃ、些か警備が甘すぎるんじゃねぇの?…総司。」
下手すりゃ子供でも入れるさ、と彼は付け足す。
歌うような、声色だった。
真の心情なんて決して含ませない。
しかし、巧みに操られた言葉は、その言葉を向けられた相手に執拗に絡みつく。
「言いたいことは、それだけですか」
部屋の温度が一段と下がった。
空気が、重い。
「おっと、抜くなよ。俺は此奴に指一本触れてねぇんだからさ」
「……」
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