第二章

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足音が遠ざかって、ついには聞こえなくなった。 齋藤 一 心の中で、彼の名前をゆっくりと呟く。 最後まで、彼の本質が読めなかった。 でも齋藤さんはどうやら、私を拒んでいるわけではないらしい。 そして、受け入れているわけでもない。 どうでもいいことなんだ、きっと。 私が此処にいようと、出て行こうと、関係ない。 ふと、彼の置き土産が目に入った。 白、ピンク、緑…小粒たちはどれも愛らしい。 知らなかった。 どんなに優しくされても、心が伴わなければ、どんな施しを受けようと心辛いものなんだって。 知らなかったんだ。 「ーーやぁ、お邪魔するよ」 それから何人かの幹部が一人ずつ訪れたところで、今日が終わった。
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