第二章

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もっと彼らと語り合いたい。 ずっとずっと、彼らを見ていたい。 “明日も、よろしくお願いします” 「ええ。もちろん」 沖田さんは、そう微笑んで私の口に一粒の金平糖を含ませた。 甘い味。 子供の頃大好きだった、懐かしい味。 「それじゃぁ、俺はこれで…って言っても、隣ですから。何かあれば手元の鈴を鳴らしてくださいね」 “わかってる。おやすみ” 「はい。いい夢を」 ひらひらと手を振って隣の部屋に消える沖田さん。 その背中を見送って、私は息を吐く。 意味もなく両手を開いて、閉じて。 足首を左右に振ってみる。 拳を握って、手のひらに爪を食い込ませれば痛い。 両足を擦り合わせば、体温が伝わる。 私は、生きている。 こんなにも、生きている。 いつまでも、生きていたい。
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