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鈴にもう少しで手が届く。
そう思った時、
「ーーなにしてんの」
また、微かな声が部屋に響く。
いや、響くという表現は間違いかもしれない。
声は本当に小さくて、よく耳を澄まさないと、暗闇の中に溶けてしまいそうなほどだった。
部屋に響いているんじゃない。
耳に、溶け込んでくるんだ。
なんでもない言葉でも、心の内に染み込んでくるんだ。
本当に、不思議な声。
「鈴…か…総司らしいな」
ーー貴方、一体だれ
そう叫びたかった。
でも、出来ない。
暗闇だから、筆で言葉を書くわけにもいかない。
見えないんだから。
「…騒ぐな、煩いからさぁ」
ーーう、煩いって…私、喋れないのに。
「だから、黙れって」
不意に、視界の暗闇が一層濃くなる。
誰かに顔を覗きこまれたのだと気付くのに、少し時間がかかった。
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