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「…あ”?んだよその目は」
また、だ。
今度は空気が張り詰められる。
肌を刺すような痛みすら感じる。
怖い。
ただそれだけだった。
「そんなに俺を疑うってんなら、此奴に聞いてみろよ。此奴の言葉なら、アンタは信じられるんだろうが」
不意に、視線を感じる。
暗闇で何も見えないはずなのに、私は声主と目が合った気がした。
彼は、嘘は一切言ってない。
私は、彼に何もされてない。
「……総司、分かってるよな。此処じゃ私闘は厳禁」
「貴方を斬れば、俺も…ですか」
御名答だという風に、口笛が吹かれる。
風のような、口笛だった。
そして、彼もまた風のような人だ。掴めない。掴もうとすると、するりと手の間をすり抜ける。
もちろん、どこに消えたのか、姿が見えるわけもない。
「何故……」
そう呟かれた沖田さんの言葉に、言葉を返すものは、誰もいなかった。
今度こそ、男はいなくなった。
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