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「大丈夫……この調子なら、声だって直ぐに出せますよ」
少し陰った私の顔色を、知ってか知らずか沖田さんは優しく私の頬を撫でた。
「焦らないで」
『沖田さん』
呟いた私に、沖田さんはもう一度微笑むと、隊務があるからと部屋を辞して行った。
「ーーやっと行った」
それと同時に顔を出すのは、言わずもがな。
あの晩から変わらず私を警戒し、忌み嫌っている藤堂こと藤堂 平助さん。
「んだよ、その顔。相変わらず腑抜けた面してんな」
藤堂さんは沖田さんが隊務などで私のそばに居ない時、見張り役として名乗りをあげて以来、何かと私の行動を監視する。
「相変わらず、喋れねぇみてぇだが、声が出ようと出まいと、アンタがここから出て行くことに変わりねぇな」
冷たく言い放った彼に、私は思わず唇を噛みしめる。
「んだよ、その目は。生憎様…娘っ子の睨みなんざ、痛くも痒くもねぇよ」
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