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「先に無遠慮を仕出かしたのは、他でもないお前だろうがよ」
「…」
「何故、新選組に来た。どうやって総司を誑かした。近藤さんもだ。
それだけじゃない。最近じゃ、一くんや源さんも顔を出すそうじゃねぇか。」
彼の言葉は真実だった。
初めこそ、業務的な挨拶に顔を出す程度だった齋藤さんや井上さんが、暇を見つけては私にお菓子や書物を届けに来てくれるのだ。
どうして急に、2人が…と疑問はあったけれど、私を認めてくれたことが単純に嬉しくて。
理由を探ることはなかった。
「アンタ、どれほど俺たちをかき乱せば気が済むんだ。」
藤堂さんの指が、きつく顎に食い込む。
怖い。この人が、果てしなく怖い。
目を合わせられない。
合わせて仕舞えば…私は…
嫌だ、見たくない。
聞きたくない。叫びたい。
何もかも、壊してしまうまでに、暴れてやりたい。
しかし逃がしてくれない。
現実を見ろ、自分の立場を理解しろ、そしてすぐにここから出て行け。
藤堂さんは、いつも決まってそう言っていた。
飾りもせず、濁しもしない。
はっきりと、自分の言葉を口にした。
「忘れるな。
ここにお前の居場所はない」
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