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「終わりだ。
これ以上やっても酷くなるだけだ。」
「そんなことない!
お願い、次はきっと」
「梅乃」
東がゆっくりと、私の名前を呼んだ。流れるように、両手を組む。
わずかに口角が上がっていた。
「あ…」
この癖…知ってる。
「今日は終わりだ」
それは、東が本気で怒っている時の癖だった。
私は東から視線をそらして、台本を握りしめる。
自分の不甲斐なさに、嫌気がした。
「ごめん…」
部員が、まばらに部室から去っていく。
そしてついに2人きりになった。
「ごめん、東…」
東は窓辺の机で、静かに台本を見直している。
部員の誰よりも使い古された台本は、もう文字が読めないほど、びっしりと書き込まれていた。
役者一人一人の癖、間、動き、タイム、演出案…たくさんのことが、東の台本にはあった。
《過去からの手紙》
東が書いた脚本。
ある日主人公ソラに届いた、差出人のわからない一通の手紙。
手紙を中心に繰り出される、過去と今と未来を描いた物語。
そして、私はその主人公を他でもない東に、任命されていた。
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