第二章

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「ねぇ、東…」 わかってる。 ヘッドホンをした東に、この声が届かないこと。 「なんで、私なの…」 わかってる。 望んだ答えなんて、絶対に返ってこないってこと。 「私、自信ないよ…」 わかってよ。 …私、これでも一生懸命なのに。 これ以上、どうしろって言うのよ。 「ーー馬鹿か、お前」 「えっ」 この時私は、本当に間抜けな顔で、素っ頓狂な声を上げたと思う。 だって、絶対に聞こえてないと思ってたから。 絶対に返事が返ってこないと思ってたから。 東は、ヘッドホンを下げて言った。 「…まえ………だろ?」 途端、視界が歪んだ。 耳鳴りがする。 え?何…聞こえない。 東?なんて言ったの?まって、行かないで!東…東ぁ?? 「……だから。…頑張れよ…梅乃」 次第に遠ざかる、東の声に、私は必死になって手を伸ばした。
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