溝と優しさ

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俺は学校から出ると、 正門をちょうど通過する一人の女子生徒を発見する。 『加藤 楓』である。 あのテスト初日、 いきなりチャリにのせろといってきた あの先輩である。 なんだかんだ、偶然が重なったりで あの掛け合いが今も継続している。 名前は会話に出てきた 学年順位が1位というところから 掲示板を見てわかった。 自己紹介など全くしていない。 向こうは俺のことを前々から知っていたらしいが わざわざ会うほどの用事もないからと 話しかけには来ない。 それは俺も同じだが… 「おやおや、1年2位のそこの君!」 「やめてくれませんかね~ 2年1位のそこの君。」 「久しぶりだな、せっかくだし、 一緒に帰りたいところなんだが、 今日は珍しく本当に、予定が合ってな。 本当だぞ。」 疑われることもお見通しですか。 「それは驚きですね。 今日は雪でも降りますかね。」 「雪ではすまんな、 槍くらい降らしたいところだ… まぁ古い友人が一人だけいてな。 そいつが忙しいやつでね、 今日は久しぶりに会うことになってる。 今度君にも紹介したいな。」 「まず、自分の自己紹介からでは?」 「お互い様だ。」 「ですね。」 「夏休みに私から連絡がきたら、 予定を合わせよう。 それじゃ、また!」 「はい、俺は槍がふるまえに家に帰ります。」 「ははは、連絡待っててくれ!」と言いながら バスに乗り込んで言った。 あの人はぶれねぇな。 それが嬉しい、変わらないことがありがたい。 俺の友達に興味ないのがありがたい
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