第2章

26/47
前へ
/340ページ
次へ
 放課後、足取り重く生徒会室へ向かう廊下を出来るだけゆっくり歩いた。ゆっくり歩いたからといって嫌な事が無くなるわけではなかったが、気分の問題だ。   俺が北村と会話していたというのは同じクラスの生徒にも伝わっていたようで、好奇心から何人かに話かけられた。今まで会話をしたことがないやつらが何人も話かけてくるを鬱陶しく思いながら、北村の存在の強さを思い知らされる。  何を話していたか、なんて答えに困るので、クラスメイトには落し物を届けにきてもらった。カードキーだったから、直接届けにきてくれたようだ、と何とか誤魔化せる内容を話し、そこそこ納得してもらった。生徒会室に呼ばれた、と正直に応えたところで損をするのは俺だけだ。  それでも何人かの生徒からは妬みの視線のようなものが送られてきた。  出来れば、平穏無事に1年生を終えたい。その為にはこの学校では目立つことはよくないことだと、散々佐倉に釘をさされたというのに、このざまだ。 「はぁ・・・」  自然と重いため息が漏れる。 「おい」  俯きながら歩いていると、聴き慣れた声に呼び止められた。俯きながら歩いていたのは、気分も沈んでいることもそうだが、前を見て歩くと、知らないやつと目が合ってしまうためだ。  顔を上げると、廊下の窓際に背を預け、腕組みしている佐倉が目の前にいた。 「おー」  俺は力なく右手をあげ、挨拶をする。佐倉にも恐らく伝わっているだろう。俺の馬鹿な珍事が。
/340ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1811人が本棚に入れています
本棚に追加