第1章

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 「……あんた、こんなところで何してるのさ」  「み、美琴ちゃ~ん。ううっ……」  「ちょ、ちょっと、落ち着いて。ほら、理由を聞いてあげるから泣かないでよ」  「なるほどね。家出とは青春してるねぇ、あいつらも」  「感心してる場合じゃないよぉ……ぐすん。あの子たち、こっちの世界のこと良くわかってないんだよ」  気軽な美琴ちゃんの言葉に、私は反論した。  「お金だって持ってないんだから……早く見つけないと死んじゃうよ」  「あいつらだって、そんな簡単に死ぬほど柔じゃないって」  「でも……」  「取り敢えず、家に帰ろう? 家で待ってればお腹が空いて、ひょっこり帰ってくるかもしれないでしょ」  「うん……」  「それに……考え過ぎかもしれないけど、シファの罠って言う可能性もあるんだから、うかつに一人で出歩くのは危険だよ」  「そう……だね」  「佐倉達も呼んで対策立ててから……一緒に探そう。ね? かなた」  「話は聞いたよ、かなたちゃん」  「気を落とさないでくださいね、先輩」  「あの……なんで先生までいるんですか?」  「帰りがけに藤堂に捕まったんだ」  不機嫌そうな先生。  やっぱり、昨日のおまじないをかけてくれた優しい人とは思えない。二重人格どころか、三重も四重も人格がありそう。  「先生は本物のエクソシストですし、きっとすぐに見つけられると思って」  どちらかというと、今一番来て欲しくなかった人を連れてきてくれたのに、聖君はのんきだなぁ。  「ところで……探しに行く前に、彼らの家出の原因を聞いていい?」  「そうだね。原因がわからないんじゃ、見つけても意味がないからね」  チラリと、先生を見る。相変わらず涼しい表情。  原因を言ってもいいのかな……でも、言わないとだめだよね。  「……先生から前にね、シファと戦うために、あの子たちの意志を奪って、自分の使い魔にしたいって言われてたの」  「ええっ、そんなこと言ったんですか先生!」  「最近、先生に助けられたりとか、色々あったから……きっと私と先生が手を組んだと思って……それで家出をしたんじゃないかな」  「確かに僕も魔物達は嫌いだけど、道具としか考えていない態度はどうかと思いますよ」  「そうですよ、先生なんかより天使と手を組んだ方がいいですよ先輩!」
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