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「あんた、やる気は無いし、二重人格だけど、人の意志は尊重する人間だと思ってた」
「…………」
でも、皆の非難を浴びても涼しい顔。我関せずって感じ。
「先生も何か言ってください」
「別に誰にどう思われようと構わない。俺の行動や言動をどう解釈するのかは個人の自由だ」
「先生、二人っきりで話す時は、私のことをからかったりもするけど、いつもちゃんと話をしてくますよね」
本当はいい人なんだって、私は思っているのよ。
「何を考えているのか、ちゃんと説明して欲しいです。そうじゃないと、誤解されちゃいます。教えてください」
「やれやれ……お姫様は俺にまでそういう甘い事を言うのか」
「先生!」
「……堕天使は手強い。奴に勝つには、あいつらを俺の使い魔にし、限界ギリギリの力を出させるしか方法がない。それだけだ」
そう言って先生は私たちに背を向ける。
「そのために人の心を踏みにじってもいいというんですか? それは傲慢ですよ!」
「ククッ……」
「な、何がおかしいんですか!」
「いや、お前なら少しは冷静な話し合いが出来ると思ったが?」
そう言って智哉君に対して薄く笑う。
「佐倉、お姫様を守るのは大変だよな? 綺麗な事ばかりじゃないだろう」
「…………っ」
一瞬黙り込む智哉君。一体、どうしたんだろう?
「そうですね……確かに……確かにそうかもしれません。ちょっと言葉が過ぎました」
「どちらにしろ、俺がいたら邪魔なようだ。帰らせて貰う」
「待ってください! 先生、あの……本当に他の方法はないんですか? このままじゃ、あの子達に、帰って来てって言いにくいです」
「そうですよ、たとえば僕とか先輩が修行して立ち向かうとかいろいろあるじゃないですか!」
「今更か? 付け焼き刃にもなりはしないだろう」
「だったら、あんた自身が戦えばいいじゃないか、なんであの子達を使い魔にしようとするんだよ」
「透がやっていたように、堕天使を退けることは俺にも出来る。だが、戦いとなると話は別だ。恐怖心や防衛本能を麻痺させ、持てる限りの能力を長時間発揮させることは、魔物より脆弱な人間にはできないことだ。この俺でさえ、な」
そう言って本当に部屋を出て行ってしまう先生。その背中には、いつもと違って、少しだけ悔しそうな雰囲気が漂っていた。
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