君を描く魔法

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「これからも、モデルするから。他のモデル使ったら、許さないんだから」 「他にモデルはいないよ?」 「うっそ。だって、絵の顔違う…」 そう言いながら、立てかけてるキャンバスを見て、あることに気付く彼女。 「これ、全部あたしの身体見て、描いた絵なの?」 そう、僕が描いた絵は、顔を変えて誤魔化してはいたんだけど、全部彼女の絵だったのだ。 描いたのは彼女のスタイルをした七人の女性。 虹の色をそれぞれ基調として、裸婦画の雰囲気を変えた七枚の絵。 今描いている最後の絵は、本当に書きたかった彼女の顔で描いている。 「これを書き終わって、虹ができたら、告白するつもりだったんだ、元々ね」 信じられない目を向けて、僕を見つめる彼女。 普段の明るい部分を見せることすら、できないように。 「僕は、君が描きたかった。こういう絵が描きたいって思ったときに、君以外は浮かばなかったんだよ。だから、顔は変えても、スタイルは変えることができなかった」 そして、僕は今書いているものも含めて、虹の絵を並べていく。 部屋に絵で彩られた虹のラインができる。 真ん中に据えてある彼女が、一番描きたかったものだけに、一番輝いて見える。 「安い絵だったかな?」 僕は彼女に向けて疑問を送る。 目つきや唇の厚さなど、少しずつ彼女とは変えて書いてはいるが、それは彼女に姉妹がいたらこれくらいの差ではないかと思われる程度。 似ていないながらも、彼女の面影はあった。 「こうやって、並べてみるとあたしっぽいね」 そう言いながら、彼女は一つの絵を指さして。 「これなんて、お姉ちゃんにそっくり。今は別々に住んでるから、なかなか会えないんだけどね」 そう言ってから、両親が離婚して、別々に暮らしていたこと。遠くで暮らしていて、ほとんど遊んだ記憶がないこと、少し前に結婚して外国に行ってしまったことなどを話してくれた。 「ね、今度は普通の絵も描いてくんないかな?」 彼女は言う。 「お姉ちゃんと二人、笑い合ってる絵がほしいんだ」 その言葉を言いながら、彼女は涙を零した。それなのに、彼女の顔は笑っている。 そんな彼女を見ていたら、僕も普通に彼女を描いてみたいなという気持ちに駆られて、「いいよ」と軽く返事をしていた。
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