プラドレッドは太陽の香り

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熱帯夜の潤んだ風が、ふわりと太陽の香りを運ぶ。 向日葵に負けないほど笑顔が、花の上に咲いた。 「……先生……」 花は、大きな花束を恐る恐る受け取った。 両手で抱えても、花の小さな両腕からは零れ落ちるほどの大きさだった。 (先生……) 花は向日葵に囲まれながら、その男の笑顔を、初めて真正面から受け止めた。 その男、久慈章輔。 正嘉大学理学部助教。 植物学者。 花の好きな人。 プラドレッドは太陽の香り  ― 完 ―
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