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その後の客入りはなく、香澄と一緒に店を閉めた。
戸締りをする香澄に挨拶をし、裏口の前で別れる。
いったん、道路とは反対方向の店裏にゴミを置いてきた花は、再び店の裏口前を通り、人一人がやっと通れるほどの細い路地から大通りへと向かう。
もう二度と会わないと思っていた久慈に、会ってしまった。
平常心でいられるわけがない。
自然と俯いてしまった視界の端に、オレンジカラーが入り込む。
パッと顔を上げると、目の前を太陽の花が覆った。
「ひゃっ」
次いで、背の低い花を覆うように、人影が大通りからのライトを遮った。
久慈だった。
「……せ、先生?」
とっくに帰ったはずだった。
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