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「お集まりの皆様、新郎新婦のご入場です。」
部屋が暗くなり、扉が開いて、斉藤と杉山さんが入場してきた。
披露宴のような感じではなく、もっとラフな感じだ。
友人達からおめでとうの言葉が飛ぶ。
口をポカンと開けた間抜けで可愛い顔をして二人を眺めるみゅーがいる。
どうしたものかと思うけど、新藤さんと酒井課長だしなぁ、今。
そのまま放置しておくか。
さらっと入場して、二人の馴れ初めなんかが軽く紹介された後。
乾杯の音頭になりそうなところだ。
水谷がみゅーに、計画通りに水をすすめてる。
もちろん、水ではなく、グラスに入っているのは冷酒。
「なんか喉が渇いてきちゃいましたね。お水、飲んじゃおうかな。新藤さんも一緒に飲んで下さいよ。」
「なんで私が飲まないとダメなのよ。」
「えっ、一人で飲んだら目立ちそうじゃないですか。ほら、いいじゃないですか。俺、もう、喉がカラカラ。」
強引にグラスを渡す水谷をドキドキしながら眺める。
安田もこの計画をしっかり水谷から聞いているらしく、止めることはない。
松本夫婦も知ってるのか、誰も何も言わないし、期待感のこもったワクワクした顔をして待ってる。
グラスを持った水谷が水を飲む。
観念したようにグラスから一口、飲んだみゅーがゲホッとむせた。
「水谷君、これ、何?お水じゃないんだけどっ。」
「えぇっ?何だろう。もしかして、燃料でしたかねっ。」
シレっと燃料って言った水谷の言葉に危うく吹きそうになった。
ヤバイヤバイ。
アルコール度数の高そうな酒だ。
一口飲んだだけで、酔っ払いモードに突入かもしれない。
これなら、乾杯の音頭もそれなりにやってくれるだろう。
まさか、ここまでお膳立てされて空気を読まないみゅーでもないだろう。
社会人の常識だ。
長い物には巻かれろ。
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