プロローグ

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ギャーギャーと言いながらもマイクの前に立たせたら大人しくなったみゅー。 「課長、一同礼とかないんですか。いきなり挨拶するんですか?」 俺に向かって聞いてくるみゅーの声がおもいっきりマイクに拾われてるのが会場中にさざなみのような笑いを誘う。 司会者もグルだから、機転を利かして 「一同礼、いっときましょうか。それでは皆様 一同礼!!!」 なんて言ってるし。 それを聞いて、みゅーが慌てて頭を下げる。 お約束のように 「ゴツン」 と頭をマイクにぶつけて、笑いを巻き起こすみゅー。 隣で見てる水谷もさっきからずっと爆笑だ。 小さな声で 「さすが新藤さん、腹が痛くなってくる。」 とヒィヒィ笑ってる。 俺も笑ってるけど、挨拶ができるのかちょっと心配だ。 「あっ、斉藤さん、杉山さん、あれ、斉藤さん、斉藤さんですかね? ご結婚おめでとうございます。」 テンパりつつも挨拶を始めた様子にちょっとだけホッとした。 俺とは対照的に肩を震わせ、期待でいっぱいの顔を隠そうともしない水谷。 「さきほど、ご紹介に預かりました斉藤さんと杉山さんの勤め先、海川商事営業部の下僕であります、私、新藤ルイ53世が僭越ではありますが乾杯の音頭を取らせて頂きます。」 「ブハッ。下僕なのに新藤ルイ53世って。」 肩を震わす水谷。 やばい、俺も今のはキタ。 さっきは痴れ者。 次は下僕で最後は貴族かよ。 「それでは、皆様、ご起立いただいてもよろしいでしょうか。」 がたがたと全員が起立するのを見てから。 「本日の良き日に、お二人の門出とここにお集まりの皆様のご多幸とご健勝を祈念いたしまして。」 なかなか上手いじゃん、アイツ。 酔っ払いのくせに。 「かんぱーーーーーーーーーい!!!」 貴族になりきって乾杯の音頭を成功させたみゅーを見て、肩の荷が下りた。 それにしても、新藤ルイ53世。 バカタレめ。
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