建物

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「おい、今ドアを閉めたのは拓夢か?」 一番ドアに近い場所にいる俺に嵐が聞いてくる。 「いや、俺じゃない。ドアは開けたままにしてあった」 「じゃぁ誰だよ、お前か百合!?」 「あ、あたしじゃない!」 百合はブンブンと首を振り、俺の服を掴む。 「あぁ。百合でもない」 俺は百合をかばってそう言った。 「じゃぁ誰だよ!?」 嵐の声に誰もが口を閉じた。 辺りは静まりかえり、耳にキーンという高音が聞こえてくる。 みんなもう理解していた。 ドアに一番近い場所にいる俺でも、手を伸ばすだけではノブに届かないということを。 ここにいる誰もがドアを閉めることは出来なかったという事を。
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