台所

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「ここにドアがある……」 入ってきたのとは逆側の壁の前に立ち、悠がそう言った。 「どけろ!」 嵐が悠の体を押しのけてドアノブに手をかけた。 しかし……。 次の部屋か廊下、もしくは外へと通じているそのドアはびくとも動かないのだ。 「どうなってんだよ、この建物はよ!!」 ガンッ!とドアを蹴とばして怒鳴る嵐。 「と、とにかくみんな一旦落ち着こうよ」 「ぼ、僕もその意見に賛成する」 百合の意見に良が賛同する。 2人とも怯えたように、少しだけ声が震えている。 「あぁ、そうだな。少し冷静になった方がいい。紙とペンはないのかな? 物事を書き出して整理してみよう」 俺はそう言い、キッチンの食器棚へと向かう。 ガラス棚の中にはキッチリ1人分の食器が並んでいて、引き出しを開けるとスプーンが入っていた。 「こんなに必要なのか?」 俺は引き出しの中のスプーンを見て思わずそう言っていた。 「え、なにが?」 彗が慌てて俺の隣に駆け寄る。 そして引き出しの中を見て、眉間にシワをよせたのだ。
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