台所

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「なにこれ。あたしこんなにスプーンばっかり持ってないよ?」 「そうなのか?」 「だってあたし一人暮らしなんだよ? こんなに必要ないじゃない」 「それもそうだな……」 俺は彗の言葉にうなづく。 確かに、茶碗やお椀などはひとつずつしかない。 スプーンだけが引き出しから溢れんばかりに入っているのだ。 これはどう見てもおかしい。 「ここ、あたしの部屋を忠実に再現しているけれど、どうして引き出しの中だけ違うんだろう」 彗はそう言いながら、一段下の引き出しを開けた。 中には、また大量のスプーン。 他の場所も確認してみたが、お箸やフォークといったものは見つからなかった。 「紙やペンも置いてないな……」 手分けをして部屋中を確認してみた結果、家具以外に置いてあるものは食器とスプーン。 そしてフライパンだけだということがわかった。
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