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「ありがとうございます。そんな嬉しい事を言われたのは初めてで………」
俺が知らないような辛いことが今までミズキさんにも有ったんだろう。
普段は凛としたミズキさんが流す涙と炎が舞う神秘さが空間で交わっていた。
俺はその光景に心を奪われてしまった。
「私がそうなら……ユウトくんは無能じゃ絶対にありません。戦う力でも守る力でもない……人を救う力があるんですから」
涙で赤くなった目で俺に微笑むミズキさんを見て、俺はこの人が泣かないで済むようにしたいと思った。
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「お見苦しい姿を見せちゃいましたね」
苦笑いのミズキさん。全く見苦しなんてことなかったけどな。
ほとんど灰になった狼の死体で残っているのは骨ぐらい。
「では帰りましょうか」
俺は残り火を足で踏むことで消した後、村に戻ろうと骨に背を向けた。
何だか嫌な予感がするが気のせいだと思う。
そう……気のせい。
「ユウトくん……お待ちください。モンスターです」
その言葉に気のせいではなかったという危機感を感じて、反射的にすぐさま後ろを振り向いた。
そこには熊みたいなモンスターがよだれを垂らしながら俺たちを見ている姿があった。
熊といってもホッキョクグマの2~3倍はあるほどの大きさだ。
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