片端の花嫁

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 この雷雨の中、どうやってそれはたどり着いたのか。薄い箱のようなそれは濡れることもなく新聞受けをすり抜けて、玄関の硬い床の上に異様な存在感を漂わせてそこにいる。  慌てて差出人を確認するけども見当たらない。  しまった。返事をする前に先を越されたか。  陰鬱な雨と気分を同じくしつつも僕は再び部屋へと戻り、祖父の椅子に身を沈めた。  ずいぶん迷ったが結局は中身を開けた。最初に受け取っていた手紙からでは事の全貌が見えなかったし、祖父が何を依頼されていたのか興味もあった。この奇妙な送り物が生前の祖父からの送り物にも思えてきたのだ。
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