片端の花嫁

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 パーシヴァント・オブ・アームズ── それは日本で訳されるところの紋章官である。  軍隊として統一された印がなかった中世では、指揮する個人の紋章によって敵味方を判断する必要があった。戦場で混乱を防ぐ為にそれを見極め指示し、彼等は時として伝令となり戦場を駆けた。  やがて個人の紋章は公的な組織や貴族などの家を識別するものへと普及し、現在では同じ紋章がふたつ以上存在してはならない法律がこの国にはある。それを監督するのが紋章官だ。  パーシヴァント・オブ・アームズは紋章官の位でいうところの補佐官と聞いた。とはいえ、それは紋章官制度のない日本での呼称分別に過ぎなく、実のところは語弊があるらしいのだけど。  確かに祖父はパーシヴァントだった。補佐官といえども、様々な細かい規定のある紋章学を習得するのに十年以上は要すると言われている。その知識を頼って祖父に寄せられた依頼に僕なんかが応えられるわけがない。
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