片端の花嫁

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 降りしきる雨が雷轟を引き連れていた。  六月を迎えたばかりのこの国は春だ。ジューンブライドで有名な、一年の中で一番光に満ちた季節。寒く暗い冬が明けたばかりの喜びの時だというのに、連日の雨に台無しにされて酷く勿体ない気がした。  窓の外では重苦しい雲が何層も色の違うグレーを重ねている。 空の上は強風なのだろう。白っぽい雲を背景に墨色の雲が引きちぎられるように流れていって、まるで紙の上にインクをこぼして広がるのを見ているようだった。 「ああ。くそっ」  小さく呟いて机上の紙を一枚握りつぶした。 空のインクに気をとられて、先程からいっこうに進まない手紙を本物の書き損じにしてしまった。
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