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横から見ても、長めの髪と黒縁メガネに邪魔されてその表情を窺い知ることはできない。 「でも、未だに誰とも馴れ合おうとしないから、どこの中学校から来たのかとか、地元がどこなのかも分からないんだけどね」 「へぇ?そうなんだ」 「てか、由良って草食系の代表みたいな容姿だよね。この前も、クラスの女子にゴミ捨てを押し付けられてたし」 「それで由良君はどうしたの?」 「文句も言わず素直に従ってたに決まってるじゃん」 「そ……そう」 「でも、由良って不思議なんだよね」 「不思議?」 「うん。草食系のクセにたまに“俺に近付くな”的なオーラを醸し出すんだよね」 「それってどういうこと?」 「う?ん。なんて言えばいいのかな?典型的なイジめられっ子体質っぽいのに、たまに人を寄せ付けないような威圧感みたいなのを発するの。だから、由良をからかう男子もいないし、それどころか寄り付こうとする人もいないでしょ?」 「うん」 「まぁ、たまにそのオーラに気付かない鈍感な女子にゴミ捨てがかりに強制的に任命されてるけどね」 苦笑する乃愛につられて私も苦笑した。
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