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◆1◆
授業中は静まりかえり教師の声しか響かなかった教室内には、今、たくさんの声と、笑い声そして様々な音が溢れている。
新鮮なその光景に私は思わず笑みがこぼれる。
4月。
入学したばかりのこの教室に、私が知っている顔は殆どない。
だからこそ私はこんな風に笑っていることができるのかもしれない。
「姫花、どうしたの? なんか良いことでもあった?」
私の顔を覗き込んでくるのは、この学校に入学して最初にできた友達、乃愛。
「なんで?」
首を傾げると
「だって、姫花笑ってるし・・・・・・違うか、微笑んでるって言った方が正しいのかも」
「なんか幸せだなって思って」
「幸せ?」
「うん、こんな時間が過ごせるのはとても幸せなことだと思う」
「こんな時間?」
「うん」
小さく頷くと乃愛は不思議そうに首を傾げる。
・・・・・・分からなくて当然か。
頭上にいくつものはてなマークを浮かべた乃愛に苦笑しつつ、お弁当箱に収まっている卵焼きをお箸で挟んで口に運んだ。
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