60人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
杉田が振り返ると、フードを取った男が立っていた。
数日前、薄暗い店に居たボーイだと気付くと同時に、周りから悲鳴が上がる。
「悪いけど、俺だけ行くわ。お前ら、後悔せえ」
そう叫び声が響き、白く光る刃が、首に当てられたとき。
大きな塊が、杉田の横を通った。
先に、包丁が音を立て床に落ち、男が仰向けに倒れた。
田淵の巨漢に乗られ、両腕を抑えられた男は、苦しそうに顔を歪めている。
「ああ見えて、田淵さんて、全国大会でいい成績残してんのよ」
杉田の隣に立ち、大きく肩を上下する山上が言った。
「寝技神のぶっさんってね~、山上君、手錠かけて~」
男を押さえたまま、田淵が言う。
ふたりとも息を切らしていたが、笑顔だった。
最初のコメントを投稿しよう!