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一瞬で、部屋の空気が張りつめた。
リリコが席を立ち、「行きましょう」と松波の横を過ぎる。
「ごめんね、杉田君。片付けしてから、すぐに来てくれるかな」
顔付きが変わった松波に、「はい」と返す。
「『この世は素晴らしい、戦う価値がある』って、杉田君は思う?」
杉田が、少ししてから「多分」と答える。
笑顔を残し、姿勢のいい背中は部屋を出て行った。
ひとりになった部屋で、杉田は、椅子に深く掛ける。
にんにくの匂いを感じ、目の前の並んだ餃子をぼんやり眺める。
戦うと口にし、近く感じた。
立ち上がり、洗面所に向かい、手を洗う。
目の前の鏡に映っている顔は、疲れているが、キモいとは思わなかった。
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