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彼女に言った通り、時間をかけてゆっくりわかり合えたらそれでいい。
「お……お邪魔します」
申し訳なさそうに俺の隣に寝転がった葉月の腕をそっと引いて胸の中に包み込む。
「…………」
「…………」
無言のままの俺の中から響く、彼女の心音がやけに早い。
それはほんの少しだけ俺に満足感をもたらしてくれた。
もっとドキドキしたらいい。
オネエの楠田部長より、男の楠田歩が欲しくてたまらなくなるまで。
華奢な彼女の身体をきつく抱きしめてやれば、尚も彼女の鼓動が逸った気がして小さく笑う。
これも確かに幸せな時間だなと感じつつ、俺は静かに目を閉じた。
俺と葉月を取り巻く環境が大きな変化を迎える時が、すぐそこまで近づいているとは思いもせずに───。
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