Act.21 Side Ayumu

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「全く……。 アンタって子はホントに、どうしてこうもアタシの心をかき乱すのかしらね」 腹立たしいほどに可愛くて、情けないほどに愛おしい。 小さく震えていた葉月の腕を引いて自分の胸に閉じ込めてきつく抱きしめてみても、いまだ自分のモノになった実感なんてない。 「…部長ぉ…」 本当ならこのままここで彼女の思いも丸ごと受け止めてしまいたかった。 けれどまだ……俺がやるべきことは全て終わった訳じゃない。 剣持がいくら専務派を食い止めると言ってくれても、我が社の派閥抗争はそんな簡単に抑え込めるようなものではない。 剣持派の人間が、素直に会長派につくという保証もない。 つまり会長の権力が絶対的なものになるまでは、まだ油断出来る状況ではないという事だ。
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