神の審判は下る

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「……罪の意識」 「え?」 「犯罪者が自分の犯した罪の意識に耐えきれなくなって、誰かに自分を裁いてほしいと考えるのはよくあることだ。教会に懺悔にきた人間の6割が人殺しだったというバカな話も聞いたことがある」 「レイチェルさんは私達に罪を裁いてほしかったんでしょうか?」 「我々が真相にたどり着けないままでいたなら、彼女は復讐を正当化してメイジと二人で生きていこうと考えていたのかもしれない……ま、全国に広がった警察組織から逃げるのは至難の業だが」 「じゃあ、私達のしたことは」 「レイチェルは罪のない人を二人も殺した。それは許されることじゃない」 オズワルドは私の迷いを断ち切るように断言した。 「いずれにしろ。あの子が予言したんだろう? 神の審判が下ると」 最後の予言は、レイチェルさんが自分に対して下したものだったのか、それともローゼンバーグ家に対して下したものだったのか。今となってはわからない。 「それにしても……まんまとあの女にしてやられた。食えない女だ」 オズワルドがあくび交じりに言った。 「え?」 「二ヶ月前の帳簿を見てみろ」 「二ヶ月前ですか?」 私は帳簿を開いた。そこには依頼主と依頼内容、報酬金額が記載されている。 「8月10日」 「え?」 私は自分の目を疑った。依頼主の欄に『デボラ・ホロヴィッツ』と書かれているのだ。紛れもなく私の字だった。 「え? え! どういうことですか?」 「二ヶ月前、あの女はここに来ているんだ。だから、メイジは私の名前と事務所の住所を予言することができた。初めてあの屋敷で会ったとき、どこかで見たことがあると思ってじっくり観察したんだが、見破ることができなかった」 ひどく頭が混乱していた。 「ちょっと待ってください」 「変装していたんだ。おそらくそのへんにいる娼婦の恰好でもしていたんだろう」 「どうしてレイチェルさん……あれ? デボラさんは、ここに来たんですか?」 「偵察のつもりだったんだろう。あの女の言う通り、我々は選択を間違えたんだ」 口を半開きにしている私を見て、オズワルドは大きなため息をついた。 「依頼内容は?」 「…………子供のお世話、です」
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