第5話 カミサマはいない

『カナメ様が、神様に、お前を神様にする様にと言われたらしい。儀式をするから、お風呂に入って用意をしてきなさい』

父親に、笑顔で言われた。

その後すぐ、教えてもらった神戸の住所まで逃げた。

『クマグロ水産』の社長の娘は、倉庫での儀式を、以前に見せられていた。

口外するなと言われたが、ひとりにだけ打ち明ける。

突然の交通事故で母が死に、『カタメ』に入信した父親を見捨てず、会社を切り盛りしていた男に。

「だから、松波さんは、恋愛表現が歪んでるんですね」

「初めての彼女が、父親の愛人になって、長い事二股かけられてましたから」

「横溝の世界ですね」とリリコが言うと、松波は「そんな、いいもんじゃないです」と返した。